ダイバーからの質問

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水中という特殊な環境で楽しむスクーバ・ダイビング。特殊ということは他のスポーツとはまったく違った、からだへの影響を受けていることにもなります。そこでダイバーが感じる素朴な体の悩みや疑問について、真剣に考え解決していこうと思います。

(以下『DIVING WORLD』高松院長執筆記事より)

水中で歯が痛い。歯のスクイズって?
「ダイビングで海に潜るとなんだか歯がシクシク痛む。講習の時に歯のスクイズって聞いたんですけど、それかな」。こんな悩みを持つダイバーは結構いるものだ。鼻腔のスクイズや、ウェットスーツのスクイズなどは良く聞くが、この歯のスクイズ、本当に起こるのだろうか?そしてこんな悩みを解消する方法はあるのだろうか?
デンタルスクイズは詰め物(修復物)はかぶせた物(補強物)と歯との間にわずかな空間(死腔)がある場合に起こる可能生があります。一般的には虫歯ができると神経をそのまま保存できる場合は、患部を削り取り、その部分に詰め物をしたり、患部が大きい時はかぶせたりします。また神経が保存できなかったりすでに神経を取ってしまっている歯の治療する場合は根の内側に根充材とよばれる詰め物をします。このような時になんらかの原因で歯のなかに死腔、すなわち不完全な密閉空間ができてしまうと、潜水による圧の変動に死腔内の気泡も圧を平衡に保とうとして、ない歯では「歯が浮いた」状態になる可能生がでてきます。ダイビングの後にこのような症状を覚えたら、まず、歯医者にいって再治療する必要があります。歯医者にいって「私はダイビングをするのでできるだけ死腔をつくらないように治療して下さい」と頼んでみてはいかがでしょうか?
レギュレータをくわえて、あごが疲れる。なんとかなる?
意外に多いのがこの悩み。「レギュレータを噛む力を込めすぎているのか、いつも人より顎が疲れるんです。水中でもくわえているのがつらいくらいで、なんとかしたいのですが…」。 物をくわえっぱなしで長時間維持するという行動は日常において、めったにない事。そんな状況を作りだすダイビングには当然の悩みかもしれない。こんな人を救う方法はあるのでしょうか?
実は私の医院にも、ダイビングをした後に「口が開きづらい、あごがガクガクする」を訴えるダイバーの方が多くいらっしゃいます。これはダイビングによる「一過性の顎関節症」と考えられます。「顎関節症」とはもともと、あごの関節が変形している場合や噛み合わせや姿勢が悪い、ストレスなどがきっかけとなって「口が開きづらい、開けると痛、ポキポキ音がする」など症状が出現し、それにともなって頭痛や肩こりなども現われます。

ではどうしてダイビングのあとにこのような症状がでるのかというと、水中という、温度の低いところで、口を開けたり閉めたりするのに使う筋肉である「咀嚼筋」が冷やされ、水中でのストレスに加えてマウスピースが柔らかいため、位置が不安定な状態で顎がおかれるために起こると思われます。

しかし多くの場合は筋肉を暖めてマッサージすれば1、2日で症状は消退するので問題はありませんが、もともと顎関節症の症状がある人がダイビングする場合や、ダイビングの後、何日経過しても、症状が消退しない時は注意が必要です。歯科医院で顎関節症の専門治療を受けることを勧めますし、レギュレーターのマウスピースを顎が安定するように改良することも必要です。とにかく口が開きづらい時のダイビングを避けた方がよいでしょう。

塩は歯ぐきに良いらしい。海水も口内の健康に効く?
「テレビのコマーシャルで聞いたんですが、塩は歯ぐきに良いらしいですね。てことは、海に潜るということは口の中の健康にいいという事になるんでしょうか?」なるほどな質問です。で、先生そこのところ、どうなんでしょう?

考え方としては間違ってはいないと思いますが確信はありません。人間の体の中の生理食塩濃度は0.9%なんです。海水の食塩濃度はそれより高いわけだから、口腔粘膜を介して浸透圧の関係で、細胞内液、外液が口の中にでて、一過性に歯肉の腫れがとれたように感じるのではないでしょうか? ただ時間がたてばもとに戻りますし、何より原因を除去したわけではありませんので、なんともいえませんね。
ダイブ旅行中に歯が痛くなったらど~しよう?
「海外にダイビングに行った際、歯が痛くなった。だけど、田舎なので怖くて歯医者に行けなかった。こんな事これからもあると思うけど、こんな時どうしたらいいんですか?」。確かに保険の問題、医療事情の問題など海外は日本とは勝手が違う。国外で歯が痛くなった時、アナタは?
たしかに世界中のダイビングスポット周辺の歯科の医療レベルが高いところもあれば、そうでないところも少なくはないように思います。また外国語で実際に自分の症状を的確に相手に伝えることはかなり難しいと私自身痛感してあります。やはり、もし心配なところがあるのなら、ダイビングに理解のある医療機関に前もって相談したほうがよいと思います。また時間があるのなら、完全に治して出国されたほうがよいと思います。
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